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鴎座俳句会&松田ひろむの広場

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「茶葉を摘む」関森勝夫氏への疑問

「茶葉を摘む」は正しいか―関森勝夫氏への疑問   松田ひろむ
「俳壇」(本阿弥書店)2008年7月号の「俳壇時評」において、関森勝夫氏は「新茶摘む」は正しいか”として、『ザ・俳句十万人歳時記』(第三書館)の「茶摘」の候(352ページ)にある。「新茶摘む」「新茶畑」は誤りとのご指摘があった。
ご指摘の点については真にその通りで、「茶摘」から「製茶」(季語としては「焙炉」・「茶揉み」など)して「新茶」となるものだった。
 用談を聞きつつ新茶摘み進む 岡田敬子
 一点の蔭なき丘の新茶摘む  島田鈴子
 川霧の雲居に浮かぶ新茶畑  福間禮子
従って例句の「新茶摘む」「新茶畑」はともにあり得ないもので、編集責任者としてお詫びし、またご指摘を改訂版に生かしたいと考えている。
さて、関森勝夫氏は、前記『十万人歳時記』の「製茶」の候に掲載されている、ご自身の
 大釜に半身乗り出し新茶揉む               関森勝夫
を、のちに下五を「茶葉を揉む」と改められたとのこと。さらに「茶摘」は一番茶のみで、現在は二番茶以降は、茶刈り機によるので「茶を刈る」が正しいと言われる。
 残念ながらこれは珍説としか思えない。
 第一に「茶葉を揉む」の「茶葉」という言葉は、手元の『広辞苑』『明鏡国語辞典』『ブリタニカ』『大辞林』など各種の辞典でも見当たらない。つまり「茶葉」は日本語としては成立していない。(なお中国語では「茶葉」は頻出する。)
つまりそれは「茶葉を揉む」ではなく「茶揉み」であって、「茶葉を揉む」は造語ならともかく、関森勝夫氏の指摘するように「正しい」か、正しくないかを考えると、正しくないのである。
 また「作業の実態に合わせ季語を変えるべき」として「茶刈り」を主張される。それはそのような作品があればそれで季語が変って行く。それもいいのだろうが、実際には二番茶であろうと三番茶であろうと、機械で刈ろうと、手摘みであろうと、それを「茶摘み」ということには変りはない。
 だから
  夫婦相和し茶摘機の響くなり                蒔田 晋
という句もあるのだ。
 茶刈りという言葉を提唱されているその同じ文のなかで、関森勝夫氏は「二番茶」「三番茶」「四番茶」は夏の季語として『図説俳句大歳時記』(角川書店)、『カラー図説大歳時記』(講談社)の誤りを指摘している。(『十万人歳時記』は一番茶のみ春季。)
 二番茶以降は六月になるというのだ。それはそれで正しい。しかし、その例証として地元新聞の「茶況」をあげているが、実はそこには前述の「茶刈り」はない。すべて「摘採」という言葉しかない。農業用語として「摘採」はあったとしても、いまの段階では俳句にはなじまない。まして「茶刈り」は、秀句・名句の登場を待つか、多くの実作が積み重ねられなければ季語とはいえないだろう。
茶刈機は横刈り蝶も横飛びに 百合山羽公
野を丸く二番茶刈の今朝の丘 吉良蘇月

その茶摘みの機械だが、それはなんと呼ばれているか、インターネットで検索してみると「茶刈り機」28300件、「茶摘み機」8630件、「摘採機」4430件。
 ある「摘採機」の説明には次のようにある。
「お茶と言えば、茶摘み娘が手でお茶の葉を摘んでいる風景が目に浮かびますが、現在では、多くが機械によって摘みとられています。今までの手摘みでは、一人で一日あたり10kg前後の摘みとり量だったものが、現在普及している可搬型摘採機と呼ばれるものだと、二人作業で一時間で10a(約600kg)の摘みとりが可能になりました。写真にあるのが可搬型摘採機で、バリカンの刃で新芽を刈りながら大きな袋に集めています。摘採機の登場で、お茶の摘みとり適期を逃さずに一度に多くの茶葉を摘みとることができるようになりました。また、現在では、一人で操作可能な乗用型摘採機も登場し、一人で一時間あたり10aの摘採ができます。」


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